2020年01月11日

河村尚子さんのベートーヴェン

 新聞の「新譜」のところで見つけて、即買いました。新譜は Vol.2 だったので、Vol.1 も一緒に。

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 Vol.1 は No.4, No.7, No.8(悲愴), No.14(月光)。Vol.2 は No.18, No. 21(ワルトシュタイン), No.23(熱情), No.24(テレーゼ)。有名どころを2曲ずつ入れて、残り2曲がなかなかに渋い選択です。

 とりあえず Vol.2 を先に聴いてます。No.18, No.21 はとにかく「切れ味の良さ」を追求しているように感じた。ノンレガートがとても印象的。もともと、No.21 と No.23 は中期ソナタの「2大巨頭」としての存在感があるためか、No.21 は「重厚さ」のイメージが自分の中では先行していた。しかしこの演奏では、特に第1楽章はペダルをほとんど使わない、軽やかな味わいになっている。一方、序奏+ロンドの第2楽章は、ペダルをたっぷり使って響きを残している。といっても、ピアノを全部鳴らし切るような演奏じゃなくって、どこか余力を残しているような音使いだった。

 考えてみると、これと同じプログラムで河村さんはコンサートをやっていたわけだ。後半の No.23 にクライマックスを持っていこうと思うと、前半の No.21 であんまり力一杯鳴らしてしまうと聴き手は疲れてしまうかもしれない。そういうことも想定した上でのこの表現だったのかもしれないな。

 後半の「テレーゼ」。これは第2楽章が独特ですね。河村さん自身がライナーノートのインタビューで語ったところによると、「装飾音符的に弾いた」とのこと。これはツェルニーの残したコメントによるもので、過去の録音ではシュナーベルの弾き方が近いそうです。こんな表現あるんだな、と思った。楽譜にするとこんな感じ。

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 「熱情」はわりとオーソドックスな解釈だった。といっても、情熱に任せて弾き散らすのではなく、どちらかというと熱を内に秘めているような演奏。技術的におお、と思ったのは、第2楽章。細かいところだけど、5小節の sfp がきっちり sfp になってるんですね。どうやってるんだろう。ハーフペダルで音を削っているのかな。

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 同じ第2楽章の第3変奏がきっちりインテンポなのも印象に残った。つい速く弾きたくなるところなんだけどね。

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タグ:音楽
Posted at 2020年01月11日 00:19:55
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