2024年02月13日

「リア王」(シェイクスピア、福田恆存訳、新潮文庫)

 シェイクスピアの戯曲は、大人になってからちゃんと読んだことがなかった。小学生の時以来の再読です。小学校の国語の教科書に最初の部分の抜粋が出てたんですが、今でも取り上げられてるんですかね? なぜ「リア王」なのか、ちょっと不思議な気はします。私は、国語の教科書の続きが読みたくて、家にあった「世界文学全集」(河出書房)を引っ張り出して全編読んだのですが、まあ小学生には難しかったですね。例えば、冒頭に出てくる以下のやりとりなんかは、小学生には意味不明だった。

グロスター 育てたのはたしかにこのわたしです。人さまに自分の倅だと白状するのにずいぶん赤面したものですが、今ではすっかり面の皮も厚くなりましてな。

ケント とんと吞みこめませんな。

グロスター あれの母親はよく呑みこんでくれました。おなかがだんだん大きくなりましたわい。

(三神勲訳)

 今になって読み返して、「あーそういうことだったの?!」と納得した次第。50年越しの答え合わせです。

 今回読むにあたって、Amazonの「試し読み」で最初の2ページぐらいを読みくらべてみたんですが、一番しっくり来たのは福田恆存訳でした。上のくだりはこうなっています。

グロスター 育てたのは如何にもこの手です。問われて吾が子と答える度に赤面し、この頃ではすっかり面の皮が厚くなってしまいました。

ケント 何の謎か、さっぱり呑込めませんが。

グロスター いや、それを、この若造の母親は実に見事に呑込んでくれましたよ、お蔭で段々腹が突出てくる、

(福田恆存訳)

 正直、この部分はそんなに雰囲気は違わないのですが、ひとたびリア王が登場すると、福田氏お得意の大げさな言葉使いが「劇だな!」という気分を高めます。

 作品の内容については、私が語ることなど何もありません。巻末についていた福田氏の「解題」が非常に面白かった。「リア王」成立の経緯や、影響を与えたと思われる作品の紹介など。それにしても、こんな古い作品について、「作品として登録された」日付や、初演された日付などが記録としていちいち残されているあたり、イギリスはすごいなと思いました。いろいろなものが即座に忘れられていくわが国とはだいぶ違います。

タグ:読書
Posted at 2024年02月13日 00:11:10
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