2023年06月14日

「こんな政権なら乗れる」(中島岳志・保坂展人著、朝日新書)

 最近の政治の動きを見ていると、げんなりすることがあまりにも多いのです。そんな中でも、少しでも希望を持って前に進むことはできないものか。中島さんと保坂さんに教えてもらおうと思い、この本を手に取りました。

 私自身は、これまで何十年も生きてきたのに、政治的なことにはあまり深い関心を持ってこなかったことを告白します。もちろん無関心というわけではなかったのだけれども、積極的に学ぼうという意識は薄かった。そういうわけで、保坂展人さんの名前はもちろん知ってはいましたが、個人的な歴史も実績も、ぼんやりとしか認識していませんでした。この本はそういう人向けに編まれたものなのでしょう。保坂さんの国会議員の時の実績や、世田谷区長になられてからの実績が紹介されています。中島さんは、さらにその背景にある保坂さんの政治家としての思想にも迫ろうとしているようです。保坂さん自身にとっても、あとがきで語られている通り、「私(保坂さん)自身の『政治の原点』に立ち戻る」作業であったのでしょう。

 強く共感したのは、第1章「今の野党に何が足りないのか」で保坂さんが真正面から指摘されている、野党の現状です。

すでに政権与党の混乱や失敗には多くの批判や疑問も寄せられています。しかし、野党が失敗や失策を単に追及し、批判するだけでは支持は集まらない。どうしたらいいのかという選択肢を示すべきです。(中略)「野党は反対ばかり」と言われる要因になっています。

(本書43ページ)

安倍政権・菅政権は許せないと言えば言うほど、たとえば同じレベルでの論議の応酬になっているんです。国会での証言が嘘か真実か、誰が見ても嘘やゴマカシが横行していますが、「嘘つき!」と追求してものらりくらりと終始するような、低いレベルの残念な政治の現状に取り込まれてしまう。もちろん、不正や不祥事には、きちんと違う!といわなければならないですよ。だが、批判を加えた上で、これからこういう社会を作るんだよということの方が、強く輝いていなければ魅力がない。

(本書46ページ)

 否定形では未来は開けないよな、ということは痛切に感じています。「〜〜をぶっこわす」というスローガンを勇ましく掲げる政治家は、一見強いリーダーとして頼りになるように感じてしまいますが、「ぶっこわす」ことを「目標」にする人が権力を握ると、多くの人を傷つける結果になるのだと思います。保坂さんは「NO!で政治は変えられない」という著作があるし、「世田谷YES」をスローガンにしています。中島さんは「永遠の微調整」が必要だと強調しています。

 この本は「新党を旗揚げする」ような性質のものではないので、「こんな政権なら乗れる」ってどんな政権なの?ということが「明確に」示されているわけではありません。しかし、考えるための重要なヒントは与えてくれています。あとは各自考えてください、ということですね。

タグ:読書 社会
Posted at 2023年06月14日 00:07:09
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